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(74)“アートとテクノロジーの島”

 香川県の高松と岡山県の宇野との間の備讃瀬戸に宇高連絡船が就航していた頃、連絡船は宇野の沖にある直島の近くを通っていました。船から見える直島は禿げ山が多く、精錬所の島というイメージでした。ところが、この島が近年アートの島へと変貌しています。
 直島は、香川県高松市の北約13キロメートル、岡山県玉野市の南約2キロメートルに位置し、東西2キロメートル、南北5キロメートル、周囲16キロメートルの小さな島です。この本島を中心に、葛島、荒神島、寺島、家島、屏風島、牛ヶ首島、井島など27島が香川県直島町を形成しています。町の人口は約3600人です。島内には、フェリーの発着港を持つ「宮ノ浦」、戦国時代の海賊の城下町を原型とする「本村」、古くからの漁港である「積浦」という3つの集落のほか、北西部に三菱マテリアル直島精錬所の工業地帯があります。

 直島の歴史は古く、喜兵衛島製塩遺跡にみられるように、古墳時代から製塩集団が生活をしていたと考えられています。日本書紀の中にも、応神天皇が吉備(今の岡山地方)に行く途中で直島に立ち寄り、本村で何日か過ごされたという伝承が残されています。応神天皇はまず今の宮ノ浦に上陸し、いったん海岸伝いに南に出て、今の揚島(あげしま)で休憩し、積浦(つむうら)に上陸して桃山を越えて本村まで行ったといいます。
 平安時代末期には、保元の乱で敗れた崇徳上皇が讃岐へ流される際に、3年間直島の泊ヶ浦(積浦)で過ごされたといわれており、「直島(なおしま)」という地名も、上皇が島民の純真素朴さを賞賛して命名したという言い伝えがあります。
 戦国時代末期には、水軍の将である高原次利が八幡山に城を築き、城下町として町並みや寺院群、神社などを整備しました。次利は、豊臣秀吉に仕え、備中高松城水攻めの際に秀吉軍の水先案内を行った功績により1582年に男木島、女木島、直島の3島600石を与えられました。その後は秀吉の四国、九州、朝鮮への出兵でも海上輸送で功績が認められ、関が原のときは東軍に味方して徳川の旗本となり、90年間直島を統治しました。しかし江戸初期の6代目の時に改易され、家系が絶えました。高原次利はキリシタンだったといわれています。
 高原氏の後、1671年、直島は幕府直轄領である天領となり、倉敷代官所の支配下に入ります。この時代は、瀬戸内の地の利を生かした廻船業(北前船)などや、製塩業の島として栄えました。水軍時代の技術を生かして全国、遠くは北海道まで出向いていたようです。また、天領であったため歌舞伎や人形浄瑠璃などの公演が特別に認められ、島内外からの一座や観客で大変にぎわったそうです。とくに淡路島から伝わったという人形浄瑠璃の人気は高く、明治時代に盛況を迎えます。その後一時途絶えていましたが、第2次世界大戦後に女ばかりで演じる女文楽として甦っています。
 直島は、元は小豆島・豊島とともに吉備国・備前国の児島郡に属していましたが、幕末に高松藩の預かり地となります。明治元年(1868)に土佐藩預かり地となった後、倉敷県(現在の岡山県)に移管され、明治4年(1871)丸亀県の管轄を経て香川県の一部となりました。当時、備讃瀬戸の島々を香川県・岡山県のどちらに分類するかを決めるに際しては色々議論があったようです。結局桶を瀬戸内海に流して桶が流れた線で線引きすることで話しがまとまり、その結果、香川側に有利に桶が流れ、直島も香川県に属することになったといいます。この逸話の真偽は不明ですが、今もまことしやかに語られています。

 直島は農業には向かない地形で、古来より製塩業に始まり、漁業や交易で生計を立てていましたが、明治以降の我が国の近代化の中で次第に取り残されるようになりました。このような中、大正5年(1916)、三菱合資会社から銅製錬所の受け入れが打診されます。この頃、足尾銅山など各地で銅の製錬の際に出る亜硫酸ガスによる煙害問題が起きており、三菱は煙害の心配の少ない離島を探していました。
 これに対して将来のことを考えた直島は製錬所を受け入れる決断をします。以降直島は三菱の企業城下町として発展していくこととなります。この精錬所は銅鉱石から銅の精錬、またその過程で生産される金・銀を生産し、現在でも、金(地金)は約5トン生産され東洋一を誇っているそうです。三菱合資会社は、現在の三菱マテリアルです。しかし、その代償も大きく、精錬所の煙害で島の北半分および周囲の島々の木々はほとんど枯れて禿山となってしまいました。

 しかし、直島の南側は瀬戸内海国立公園に指定された緑豊かな海岸が残されていました。そこで、直島町は、島の南端の風光明媚な地区を秩序だった観光地にしようと観光開発を誘致します。最初に観光開発に着手したのは藤田観光でしたが、その撤退した後を受けたのが岡山の福武書店(現・ベネッセコーポレーション)です。ベネッセは、昭和62年(1987)に一帯の土地を購入し、平成元年(1989)に安藤忠雄氏のマスタープランによる「直島国際キャンプ場」を整備します。さらに「直島南部を人と文化を育てるエリアとして創生」するための「直島文化村構想」(現・ベネッセアートサイト直島構想)を発表し、平成4年(1992)には「ベネッセハウス」(現・ベネッセハウスミュージアム)の建設などへと事業を拡大させていきました。
 平成9年(1997)からは、直島に残る民家を修復・保存し、そこで現代美術作家が作品を制作・展示することで、古い民家の空間を現代に甦らせるという「家プロジェクト」を進めます。また、平成13年(2001)には、直島全体を舞台にそこでの人々の暮らしや歴史と深く関わる作品を創作・配置する企画展を、「スタンダード」展として始めて開催します。その後も、平成16年(2004)7月に地中美術館をオープンし、平成18年(2006)10月から「直島スタンダード2」を開催しています。
 このような取り組みにより、古い集落にもカフェや民宿等ができるなど徐々に変化してきています。また欧米などの高級リゾートホテル誌に取り上げられ、直島に来る外国人観光客が徐々に増えてきています。

 一方、直島では、東隣の豊島(てしま、香川県小豆郡土庄町)で発生した産業廃棄物の不法投棄問題から端を発して、産業廃棄物処理施設を総合的に整備する「エコアイランドなおしま事業」(循環資源回収事業)が展開されています。この事業は、直島町に蓄積された製錬施設や技術、人材等の既存産業基盤を活用し、これまで再資源化が困難であり、最終処分されていた廃棄物等を「都市鉱山」と位置づけ、これらから社会に有用な資源を回収するとともに、ゼロエミッションを目指し、広域的な循環型社会システムの構築に貢献しようとするものです。
●訪れてみたいところ

【島中部西側の宮浦港周辺】

○海の駅なおしま・赤かぼちゃ
 宮浦港のフェリー・ターミナル。平成18年(2006年)10月1日にオープン。設計は金沢21世紀美術館・ルーブル美術館別館の設計も手がけたSANAA(妹島和世・西沢立衛)。
直島宮浦港海の駅
 
 ターミナル広場設置されている草間彌生の「赤かぼちゃ」は「直島スタンダード2」参加作品。
宮浦港にあるカボチャ

 宮浦港から大槌島と瀬戸大橋を見た風景。
直島宮浦港から大槌島と瀬戸大橋をのぞむ


○住吉神社
 日本書紀によると、応神天皇は、妃の吉備の御友別の妹「兄媛」が郷里へ帰ったあとを慕い、難波の津から船出して瀬戸内を巡幸し、小豆島を経て吉備の葦守宮に向かい、風待ちのため直島の西の浦に着きました。この時、天皇が船から岸に上がり、浜辺の岩上に鎮座しました。この岩が宮浦港すぐ傍の住吉神社境内にある「応神天皇腰掛岩」です。

○007「赤い刺青の男」記念館
 人気スパイ小説「007シリーズ」の原作者イアン・フレミングの没後執筆を担ってきた後継作家の一人、レイモンド・ベンスンは、「007/赤い刺青の男」を書いています。この小説の中で、直島の美術館を会場とするサミット・主要国首脳会議を狙うテロをジェームズ・ボンドが阻止するというシーンがあります。この小説の映画化実現と直島でのロケ誘致活動の一環として宮浦港近くに007「赤い刺青の男」記念館が造られました。平成17年(2005)7月24日の開館セレモニーには作者ベンスン氏も夫人を伴って出席しました。

【島南部】

○地中美術館
 「自然と人間を考える場所」として、平成16年(2004)7月にオープン。安藤忠雄の設計。財団法人直島福武美術館財団により運営。直島の南側に位置する山の上の塩田跡の地下に建設され、クロード・モネ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルの3人の作品が保管されています。地下にありながら自然光を採り入れ1日のうちでも時間によって作品の見え方が変化します。
地中美術館01

 写真は地中美術館から南を見た風景。
地中美術館02

地中美術館04

地中美術館07


○ベネッセハウスミュージアム
 平成4年(1992)にオープンした美術館とホテルの複合施設。安藤忠雄の設計。レストラン、カフェを併設。周辺には、ベネッセハウス関連の施設が整備されています。また、草間彌生の「南瓜」をはじめ様々な屋外アートが置かれています。

○若山牧水歌碑
 大正10年(1921)若山牧水は、鯛網見物に直島を訪れています。このとき牧水が詠んだ歌の歌碑が琴弾地の浜に建っています。
  ことひきの浜の松風静けしと聞けば沖辺を雨過ぐるなり

○「おやじの海」記念碑
 昭和50年代に大ヒットした演歌「おやじの海」を記念した碑です。作詞作曲は現在も直島在住で活動を続ける佐義達雄、歌唱は秋田県出身で当時直島製錬所で佐義氏と同じ職場で働いていた村木賢吉。職場で知り合ったアマチュアの自主制作した楽曲が全国ヒットのミリオンセラーに輝きました。

【島南東部の積浦周辺】

○崇徳天皇神社
 上皇の住んでいた泊ヶ浦(積浦)にあった行在所を山上に建てられた神社に移設したものです。京から追ってきた姫と上皇との伝説が残る「姫泊山」、「琴弾地浜」、同じく上皇を訪ねて来た大・中・小納言が船を着けた土地が「納言様」、上皇が能の舞台を人々に鑑賞させた場所が「能見の浜」で舞台になった沖合いの島が演題「葛の舞」に因んで「葛島」、など多数の地名が上皇ゆかりとされます。

【島中部東部の本村地区】

○本村の集落と改修されてアートとなった古家屋等
直島本村

「角屋」 宮島達男作品。「家プロジェクト」作品
「南寺」 ジェームズ・タレルの作品を展示。安藤忠雄の設計。「家プロジェクト」作品。
「護王神社」 杉本博司の設計。「家プロジェクト」作品。
「きんざ」 内藤礼の作品を展示。
「本村ラウンジ&アーカイブ」 アートサイト直島の資料の収集と公開の拠点。西沢立衛による空間設計。
「空」 妹島和世+西沢立衛/SANAAの作品。「直島スタンダード2」参加作品。
空

「碁会所」 須田悦弘の作品。「直島スタンダード2」参加作品。
碁会所

「石橋家」 千住博などの作品。「直島スタンダード2」参加作品。
石橋家_外観

石橋家_母屋の中

母屋と蔵に囲まれた石橋家の庭

「はいしゃ」 大竹伸朗の「直島スタンダード2」参加作品。
はいしゃ



○直島町役場
 安土桃山時代の名建築「飛雲閣」(西本願寺)を参考に設計されものです。

○八幡神社
 八幡神社は、御本殿中央に応神天皇を、西に神功皇后、東に仲哀天皇を祀っています。この御本殿に鎮まる三座の神々を総称して八幡三社大神といいます。神社参道の入り口には、高さ385cm、柱の直径50cmの明神鳥居が建っています。直島産の花崗岩製で、桃山から江戸初期の作風の特徴を残しています。県の有形文化財に指定されています。
鳥居

 この神社の山門にある「随神像」と拝殿にある「猫」は、上原三千代の「直島スタンダード2」参加作品。
直島八幡神社の参道を守る隋神像

猫


○極楽寺
 正式名称は、八幡山極楽寺長寿院で、八幡神社の別当寺。開基は平安初期、聖宝尊師(理源大師)によると伝えられます。

○高原城跡・高原寺跡
 直島を統治した高原氏の城跡とその一族の墓があります。直島の人たちは江戸時代末期に大坂の中座を模した本格的な舞台を城山に作り、農村歌舞伎を上演していました。

○向島
 川俣正のアトリエがあります。
向島プロジェクトハウス


【島中央部】

○三菱マテリアル関連施設の古家を活用したアート
「ピンポンギャラリー」 宮本隆司の「直島スタンダード2」参加作品。
ピンポンギャラリー

「旧床屋」 三宅信太郎の「直島スタンダード2」参加作品。
旧床屋


【島北部】

 「エコアイランドなおしま事業」は、直島を、全国の循環型社会のモデル地域にしようとする計画で、平成14年3月28日、国(経済産業省、環境省)から、先進性、独創性のあるプランだとして、全国15番目、島嶼部では初めて承認を受けた事業です。

○香川県直島環境センタ-
 豊島の産業廃棄物は海上輸送でここへ運ばれ、中間処理されています。

○有価金属リサイクル施設
自動車や廃家電等のシュレッダーダスト、廃基板、銅含有スラッジ等を焼却溶融処理により可燃物や塩素等を除去する施設。










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玉野市 民宿

玉野市☆民宿で見つけた、いい民宿! !いつも、このブログを読んでいただきありがとうございます。大変ご好評のこの民宿日記ブログ。今日紹介する民宿お奨めは、ダイヤモンド瀬戸内マリンホテルです児島(瀬戸大橋線)車20分見えてきました。見えてきました。あれです。

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Johさんへ

 コメントありがとうございます。
 三菱が最初豊島に立地を打診して断られたことは知っていましたが、大地主の片山家が反対したということは知りませんでした。
 今後とも、お気づきの点があればコメントをよろしくお願いします。

三菱マテリアルの件

初めまして。
ご存じかもしませんが、その昔、三菱マテリアルは始め、豊島に精錬所を作ることを打診したのですが、その当時の豊島の大地主、片山家が反対し、隣の直島に精錬所が作られる事になりました。
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